一般財団法人 国際貿易投資研究所(ITI)

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フラッシュ

2009/02/26 No.120経済危機の底はこの1月だった

鬼塚義弘
(財)国際貿易投資研究所 研究主幹

100年に一度の金融経済危機と言われる。製造業の生産量は3〜4割落ちていると言われるが、果たしてこの危機はいつまで続くのであろうか?

昨年12月末から今年の2月初旬にかけて長野県諏訪地域の中小企業18社を廻った。この地域には精密加工を得意とする機械産業、同部品産業を主として1000社が集積している。訪問の調査目的は別にあったが、最近の未曽有の金融経済危機について現在どのような状況にあり、今後どのような展開を予想しているか、中小企業の経営者が持つ独特の感覚がどのように捉えているかお伺いした。

現在、大手セットメーカーが需要域と在庫の調整に動き下請けへの発注が急減しており、まさに崖から滑り落ちるような状況であるとの認識があった。

多くの経営者は、この危機は恐らく、4〜5月まで生産は落ち続け、その時点が底で、その後緩やかに回復するか、そのまま底を這いずるかといったところがコンセンサスであった。

唯一私の注目した答えで次のようなものがあった。A社長は「この危機の最悪期は1月であった。2月に入ると少しではあるが、明るさが見え始めた。その兆候はいろいろなところで見られるようになった。私の会社もこれから増産が出来るように体制を整えつつあり、準備をしている。4月からの来期は売上高20%増を計画し、その勝算もある。また、大手が手放した開発要員も私の企業は中小企業ではあるが雇用することも出来た、この危機はチャンスと捉えている」とのことであった。誠に力強い直感と言える。確かにこのところ、上海の株価はかなり上昇してきたし、素材産業は増産に入りはじめたなど明るさが見え始めた兆候も出ている。

しかし最近の大手企業の決算予想での赤字転落、派遣社員の雇用打ちきり等世の中の状況は目を覆うばかりであり、少し社長の認識とずれがあるのではと聞いてみた。これに対し、「マスコミの報道が悲観一色なのが問題である。マスコミは皆同じような記事ばかり書いている」とのことであった。

確かに多くの新聞報道の中で解説しているのは数少ない特定のエコノミストやアナリストばかりである。少数意見をわざわざ探して記事にするより、有名な人のコメントを得て記事にする方が無難なのかもしれない。

日銀が4000人を対象に行っている3か月毎の「生活意識に関するアンケート調査」によると12月調査の景況感DIはマイナス81.9で調査開始以来最低となった。週刊東洋経済09.2.7号によると、このような景気判断の根拠である判断材料は「自分や家族の収入の状況」「勤め先や自分の店の経営状況」などより「マスコミの報道を通じて」がトップで、12月調査では43.3%と9月調査時19.5%より倍増したという。個人の景況感は従来以上にマスコミ報道の影響を強く受けていると伝えている。マスコミは情報の発信元として景気に対しても大きな影響を与えている。それゆえに、多くの人に取材し、少数意見も記事にすることが重要となろう。

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