一般財団法人 国際貿易投資研究所(ITI)

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2004/01/28 No.58個人・NGOなどによる「商品」援助の規模
− 米国からイラクへ715万ドル相当の医薬品 −

増田耕太郎
(財)国際貿易投資研究所 研究主幹

最近、開発途上国や災害被害地へ、毛布や衣類などを送る運動が盛んに行われている。募金を集め、イラクなどへ医薬品を贈るための活動も盛んである。国の政府開発援助(ODA)ではなく、個人の自発的な援助活動に参加する者が増えるにつれ、NGOなどの支援活動が拡大しているのに違いない。でも、こうした支援がどの程度の規模なのか、どこにどれだけ送られているのか知ることは難しい。

ODA予算が減少している一方、NGOなどによる支援活動の動きが広がっている現在、支援者を増やし民間レベルでの活動を一層拡大することが期待されている。個人やNGOなどによる支援規模を知ることは、一人一人の活動が小さいものでもまとまれば、大きな国際貢献活動につながることを実感させ、支援者の増加に役立つのではとの想いがある。

救援・援助物資は無償であっても外国へ積み出せば「商品の輸出」だから、通関統計の対象である。日本では援助物資と他の商品との区別をしないので、通関統計から援助物資の「輸出」実績を知ることができない。

ところが、米国は個人や民間機関による救援・援助物資を他の「輸出」品と区別し、統計番号98.02に分類する。「食料品」、「医薬品」、「衣類(履物、帽子等を含む)」、「その他の物資」の4品目に分け「輸出額」が分かる。ただし、政府機関による贈与や援助物資(軍服を除く)は含まれない。また、個人が海外に送る貨物のうちギフトなどの小額であるものは、輸出統計では「低額貨物」として別に分類がある。統計番号98.02に分類した商品として申告した輸出総額は、8億3,771万ドルで、米国の輸出総額(6,606億ドル)の0.127%を占めた(2003年1〜11月)。いずれも、過去最高だった2002年の7億5,750万ドル、0.109%を上回り、2003年は過去最高になる。医薬品の伸びは著しく、最近3年間は約30%前後の増加が続き、2003年1〜11月は前年同期に比べ36.3%も増えている。(図参照)

米国輸出統計分類98.02による輸出額の推移(単位:100万ドル)

(出所)米国輸出統計よりITIで作成

188の国・地域へ支援

2003年1〜11月までの統計によると、援助物資は188の国・地域へ積み出されている。医薬品が144、食料品が81、衣類が131、その他の商品が162の国・地域へ送られている。開発途上国がほとんどである。例外的に日本や英国などの先進国への出荷もある。先進国にある開発途上国への支援機関向けが含まれているかもしれない。国際的なNGOの中には、緊急支援のための備蓄をしているところがあるからだ。途上国などで必要な医薬品の中には国内で生産されていないために、米国の民間機関等から調達する場合もある。

仕向け先の上位5カ国を、ニカラグア、グアテマラ、ジャマイカ、エル・サルバドル、ハイチと中米・カリブ海諸国で占める。ただし、国別順位は大きな災害などがあると変動する。阪神・淡路大震災があった1995年には3億2,690万ドル相当の物資を日本向けに出荷した。日本向けはロシア、ポーランドに次ぐ3番目で、援助物資の「輸出」の約6.8%を占めた。

国交がない国・地域へも積み出されている。例えば、北朝鮮へ128.3万ドル相当の医薬品を含む136.9万ドル相当の物資を積み出した。これは米国の北朝鮮向け輸出額(797.7万ドル)の約17%にあたる。また、イラクへ2003年では11月までに895万ドル相当分の物資が積み出された(対イラク輸出の約3.0%)。そのうち、715万ドル相当分を医薬品で占めた。イラクへは1998年の608万ドル相当額の「輸出」を最後に4年間実績がなかった。アフガニスタンへは、70.8万ドル相当の医薬品を含む150.5万ドル相当の物資が送られている(対アフガニスタン輸出の約2.8%)。

統計番号98.02から分かること

統計番号98.02による「輸出」は、個人やNGOなどの民間機関による援助・救援物資だから、通常の商取引による輸出と性格が異なる。これらの価額評価は商業取引の価格と比べて「同等」の評価であるかどうかは重要ではない。「1万ドル相当」の衣類より「衣類1000着」など、数量でとらえる方が援助の実態を知るうえでは好ましいかもしれない。また、NGOなどの民間機関が米国から「輸出」したものに限られるから、米国の個人・民間機関による救援・援助活動のごく一部に過ぎない。

それでも、NGOや個人などによる国際貢献の一端を知ることができる。小さな活動でもまとまると、大きな国際貢献活動につながることを「輸出額」は実感させる。

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